1.上腹部痛(心窩部痛)

上腹部痛は内臓神経が集中しており(太陽神経叢)、多くの腹部疾患で痛む部位である。たとえば、急性虫垂炎は右下腹部の炎症であるが初期症状は上腹部痛であることも多い

急性なら 胃アニサキス症 エコーで胃壁肥厚 刺身摂取歴(イカ・サバなど) 急激な周期的な痛み

        急性胃粘膜病変 エコーで胃壁肥厚 急性ストレスが原因 (医原性急性ピロリ感染もあるが今ではみられない)

        急性膵炎    50%は胆石性、30%はアルコール性

        急性胆管炎   胆石が胆嚢管でなく総胆管に落下すると心窩部痛となる 発熱や黄疸を伴うことも多い

        急性心筋梗塞  右冠動脈が閉塞し下壁梗塞となった場合、心窩部痛を生じる場合があり要注意

        肝周囲炎(Fitz-Hugh-Cutis症候群) クラミジアなどの細菌感染が卵管経由腹膜感染を起こす 右季肋部痛もでる

        感染性腸炎   周期的腹痛が上腹部から徐々に臍周囲部へと移行することが多い、嘔吐・下痢・悪寒をきたす

        急性虫垂炎   嘔気・上腹部痛が初期の自覚症状の事は多い 徐々に右下腹部痛へと移行する

慢性なら ①症状の強さは 食前>食後

         胃潰瘍・十二指腸潰瘍  ”The Ulcer” has not built in a day!(空腹時の痛みが日に日に徐々に強くなってくる)

                     ヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因の場合は、除菌によりほぼ完治する。

                     痛み止め(ロキソニン、イブプロフェンなど非ステロイド系抗炎症剤)によるものも多い

        ②症状の強さは 食前<食後

         機能性胃腸障害     胃排出能が弱い方。食後の胃もたれ・げっぷを伴う 

                     仕事や家庭のストレスが原因のことは多い

                     ドンペリドン、スルピリド、ある種の漢方薬が有効であることが多い

         逆流性食道炎      食べ過ぎる、食後に腹圧があがる(草むしり、横になる)と症状が悪化する

                     酸っぱいモノがあがる のどがイガイガする 咳が出る

        ③症状の強さは 食前=食後

         膵癌          背部に放散する痛みが徐々に強くなる 夜中に寝ていても痛む

         過敏性腸症候群    食後に上腹部から左季肋部にかけて痛みが生じる。

                     食後は胃結腸反射により大腸の蠕動も活発化するからである

                     排便やガスの移動により痛みが軽減する